No.5  近藤的時代劇分析
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近藤ゆたか流でざっと「時代劇とは」をお聞きしたいんですが?
「時代劇とは」って…。難しいね。(笑)。
僕、この仕事やらせていただいてすごいショックだったのが、正直僕らの中で時代劇を一つのジャンルとしてしかとらえてなかったんですよ。
でもこうやって見ていくと、実はすごい細分化されてて、
その一つ一つの魅力をみんな知らないだけっていう状態なんだなっていうのをほんとに目の当たりにして。
先ほどこれ(近藤さん資料)読ましていただいたんですけど、これなんかもたぶん、そういうコンセプトなんじゃないかなっていう気がするんですよ。

そうですね。結局だから、みなさん、まあ俺なんかも勘違いしてよく言っちゃうんだけど、「時代劇ファン」っていうくくり方しちゃうんですよね。
でも時代劇って要は現代劇とおんなじぐらい広いから、やっぱりそういう言い方でくくっちゃっていいのかどうかっていう所があって。
ただ、ほんとに現代劇っていうのの中にトレンディドラマがあったりラブロマンス物があったり刑事ドラマがあったり、っていうのみたいに、
時代劇の中にもそういう全てが入ってるものですから、だからわりと時代劇ファンっていうのの中の人たちでも、
勧善懲悪の「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」みたいのが好きで「必殺」シリーズとかは好きじゃないっていう人たちもいるし、
あと人情物の山本周五郎原作とかみたいな、チャンバラが出てこないような、ほろりとするようなのが好きっていう人たちもいるしで。
ほんとはやっぱり一緒にしてはいけないものだとは思うんですよ。ただ、やっぱり「時代劇」ってくくり方をしないと、作ったり、ファンが…
なんていうかな、活動しにくいところがあるんで、どうしてもくくっちゃうんですけどね。
ほんとにオールマイティですべてを見てる人っていうのはなかなかいないと思うんですけどね。
実際それで今やってるのは結局、現行の番組の本数が少ないんで、ほんとに勧善懲悪なものしか残ってない時代なんで、
もう全然ほかのジャンルを知らないっていう人たちの方がはるかに多いとは思うんですけどね。
実際すたれちゃったものだと、アウトローが主人公なものなんかだと、「木枯し紋次郎」とか、
そういう社会に入れない人たちが主人公っていうのなんかは今見るとかなり新鮮だと思うんですよね。
だから実際もったいないなあと思うのが…どう言っていいのか、あまりにも広い話なんで(笑)どう話をしたらいいかなあと。
インターネットなんで、図なんかも出せるじゃないですか。だからもし可能であるならば、近藤さんの、ざっくりとしたものでかまわないんで、
時代劇の流れがわかるようなものを提示できないかなと思ってるんですよ。悪者系とか、何々系とか、時代劇は時代劇ラブコメっていうジャンルがないんで、
どうしても何々系ぐらいしか言いようがないんですけれども。そういうのが出来るかどうかっていうのをちょっと御相談したかったんです。
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そうですね…例えばこう、要素をX、Y軸で…これも非常に、ねえ?微妙なものがどっちに入るかっていうのがあるんで。
例えばアウトローな時代劇に対して勧善懲悪というか、体制側のドラマっていうのが
「暴れん坊将軍」とか「水戸黄門」っていうのがこっちに入って、
「木枯し紋次郎」はこっちに入るみたいなわけ方は出来ると思うんですよ。で、こっちは…
シリアスとコメディとか。
そうですね、シリアスとコメディとか。
たぶん…例えば「水戸黄門」をどっかに置こうとすると体制側で、あれはシリアスなのかコメディなのかと言われると…。
どちらかといえばコメディ色が強いですよね。
コメディ…ですよね。まあ、「水戸黄門」をここらへんに置いたとして。
水戸黄門

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そうすると「木枯し紋次郎」なんていうのはひたすらシリアスでアウトローだから…こんなカンジになってきて。
それで「必殺」シリーズなんていうのは、アウトローであって、シリアスな部分もあるけどかなり、
例えば「仕掛け人」だったら、緒形拳の梅安なんていうのはわりとひょうひょうとコミカルな感じでやってたりするんで、
だから完全にシリアスっていうよりはちょっとこのへんに入るような感じだと思うんですよね。
そういうカンジでいくと、例えば代表的な…体制側でシリアスだと…
「大岡越前」?
そうですね、「大岡越前」はこのへんに来ちゃうのかな。
あとそうですね、「銭形平次」なんかも生真面目にやってますからね。
大岡越前

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「三匹が斬る」とかはどこになりますか?あれアウトローですよね?
そうですね。
アウトローのコメディじゃないですか?「必殺」よりはコメディが強い…。
そうですね、ええ。でまあ、そんなに裏の稼業みたいなめちゃくちゃ悪いことをしてっていうよりは、
善意によって人殺しをしてることを考えるともうちょっとこっちかなって感じで。あとなんだろうな…
三匹が斬る

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「剣客商売」
そうですね、「剣客商売」はシリアスで、体制かアウトローかって言われると、
わりと体制にくっついてるようなところもあるから…。
真ん中でちょい体制側…。
ですかね。「鬼平」なんかはもう、シリアス、体制ですよね。
ほんとに最近はもうこっち側ばっかりみたいな感じにはなってるんですよね。
「座頭市」なんかもここですよね。
鬼平犯科帳

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そうですね、「座頭市」なんかも…「座頭市」も、でも回によってはコミカルなものもあるし(笑)
非常に微妙なところですよね。
徹底的にアウトローですよね。
ええ、徹底的にアウトローですからね。「座頭市」が入って…そうですね、
あとメジャーなもの…すごく分類が難しいのなんかだと、 あんまりメジャーじゃないけど北大路欣也さんがやった
「地獄の辰捕物控」なんていうのが1972年なんかにあるんですけど、
これが主人公の地獄の辰っていうのが岡っ引きなんですけど、岡っ引きってなんか「銭形平次」みたいないい人、
善良な正義の味方がやってるっていうよりも、 実際はもともと悪人で犯罪者でそれを目こぼししてやって、
そのかわり悪党同士の情報網を得るために雇ってたみたいなことがあるっていう設定…
座頭市

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まあ、史実があるらしくてそのへんをメインに押し出してきてるのが「地獄の辰」だったりするんで、
完全に元犯罪者で寄せ場送りっていうのになって帰ってきて雇われてるっていうやつなんで、
アウトローなんだけど体制についてるっていう(笑)感じなんですよね。
それでいて完全に話はシリアスなんで、シリアスなんですけど、両極端にこう…
真ん中っていうよりは、アウトローでありながら体制側にっていうのがいたりするんですよ。
内容としては最後には岡っ引きとしての職務を果たすっていう感じになるんですか?
ええ、それも岡っ引きだったらきちんとつかまえて縛り上げてそれでお終いのはずなんですけど、
「地獄の辰」の場合はやたらと長い十手持ってて、それでぶっ叩きまくるんですよ(笑)。
結局たいてい追っかけてるうちにもう、感情移入しまくっちゃって、悪党が許せなくなって(笑)、
つかまえたはいいけど縛らずにガンガンぶっ叩いて、 ほんとにもうぼろ屑のようになってから(笑)
連れて帰るとか、同心とかがとめて「もうやめろ!」とかって言って。それでつかまえて。
それを北大路欣也さんが?
地獄の辰

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そう、北大路欣也がやってるんですよ。
うわ、こえー。
そんなんなんでね、すごいギラギラとしたものなんでね。ぜひこれなんか今の若い人には見てもらいたい(笑)。
だから非常にそういう分類の難しいのがあって。
左端から右端に抜けるみたいな。
そうなんですよね。
僕、「影の軍団」フリークなんですよ。あと「大江戸捜査網」。
へえー。「影の軍団」だとあれは反体制…アウトローで、まあシリアスではあるけど、
わりとコミカルな部分も…風呂屋とか猪鍋とか。
そうすると「地獄の辰」みたいに上下でわかれる感じになって。
あれですか?「影の軍団」のもとになった映画なんていうのはご覧になったりしてないんですか?
影の軍団

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いや、たぶん見てないと思いますね。
TVで始まる前に映画で。TVは「影の軍団・服部半蔵」っていうタイトルで、映画は「服部半蔵・影の軍団」っていうタイトルで。
で、キャスティングは…西郷輝彦がかぶってるだけかな。TVだと千葉真一がやってる役を映画だと渡瀬恒彦さん、渡哲也さんの弟さんがやってて、
でもう目一杯シリアスで、忍者の集団戦をアメフトの試合みたいな描き方してるんですよ。
全然飛んだり跳ねたりしなくて林の中で伊賀と甲賀が闘うことになると、 みんなアメフトの防具みたいな、
こんな肩の防具を中に着込んでて、こんもりした状態で。
外は忍者服なんですか?
忍者服なんですよ。ヘルメットのようなのを被ってみんなこう、構えて「ハッ、ハッハッ」つって(笑)。
ダーッとみんな林の中を木をぬいながら走って行って。で、ガーンッとお互いにぶつかり合って、
ぶつかって転がってお互いに上に乗りあったりなんかしてごろごろしてるうちに、短刀で胸を突き刺して相手を倒すみたいな。
で、またなんか合図があるとザーッとみんな引いてって、そうすると死体がいくつか転がってて
味方の死体をずるずる引きずって帰ってくるみたいなことを延々とやるような忍者物があって。
結局それのTV版ということで作られたのが千葉真一のやつで。
千葉真一のやつはジャパンアクションクラブの人たち使ったんで、 そういう忍者戦じゃなくてもっと飛んだり跳ねたりの派手な方向になったんですけどね。
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だからそういう映画からTVっていうようなのがわりとあるんで。そのへんもおもしろいんですけどね、くらべて見ると。
「大江戸捜査網」は体制側で…そうですね、シリアス(笑)。
「死して屍拾う者なし」っていう。
そうですね、ええ。そうすると体制側だけど、表側ではアウトローな生活はしてるからこのへんでいいのかな…。
服部半蔵の家って潰れるんでしたっけ?
うん、服部家は2代目かなんかで。
それは柳生一族によって潰れるんですか?
大江戸捜査網

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いや、一応歴史でなんか言われてるのは、伊賀組同心のストライキ。それで責任取らされて。
ストライキっていうのはお金の問題なんですかね。
結局その、たしか2代目だったと思うんだけど、2代目でなった服部半蔵がわりと現場知らずになった人みたいで、
その上公私混同の激しい人だったみたいで、部下たちが「やってらんねえ!!」みたいなことになって、お取り潰しになったみたいな。
責任取らされてっていうふうには、なってる。
くだらないですね。
「影の軍団」だとどういう理由だったかなあ?確か「影の軍団」はなんかの陰謀で、そこから復帰しようとして、
今幕府にきちんと雇われてるのは甲賀の忍者達だったんで、甲賀と闘ってなんとか幕府に雇ってもらおうみたいな話だったんですよ、映画の方は。
TVの方はわりとそんなに幕府に雇ってもらおうっていう意欲は薄かったんじゃないかなあ。
そうですね。わりとなんか「好きにやろう」みたいな感じでしたよね。
そうですね、うん。
最終シリーズ以外は。最終シリーズは幕府転覆が目的なので勝海舟のシリーズで。僕、どっちかっていうと特撮ファンなんで、その流れでJACなんでっていう。
ずっとテレビ東京の再放送で見てて。昼は「影の軍団」を見て夜は「大江戸捜査網」を。

ああ(笑)、なるほど。あれなんですよね、忍者ものっていうのも語っていくとまたすごく長い流れがあって。
TV時代劇の特徴って表と裏のギャップみたいなのがありますよね。
「長七郎夢日記」とかもそうだし、身分を隠してっていうのがわりと基本だったりしますよね。

そうですね、うん。
「暴れん坊将軍」はどこに入るんですか?
「暴れん坊将軍」はたぶん…このへんになるんじゃない?まあ、体制も体制(笑)。
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見たこと無いっていう意味では20代とか10代とかの子は、反体制もののほうがびっくりすると思いますけどね。
うん、そう思うんですけどね。
これって「怪」はどこにあたるんですか?
「怪」は…反体制、アウトローかな?
じつはいちばん真ん中なんじゃないかっていう気もするんですけど。そうすると図としては非常にいい感じかな?(笑)。
たしかに(笑)。コミカルな部分もあるしシリアスな部分もあるし。
2話に関して言えば、体制側だったわけじゃないですか。
そうですね、そういった意味じゃほんとにアウトロー気取ってるわけじゃなくて、なんでもありで雇われてる。

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そうすると逆に「怪」はこのすべてにこう(笑)ていうかね。極端にきちゃうとかね。
「必殺」シリーズっていうのは?
「必殺」はこのへんかな。
「紋次郎」はじゃあ…。
「紋次郎」はここ…シリアスとアウトロー。まあねえ、一つの作品をこれにあてはめるっていうのはとても難しいんですけど。
一番組ずつ分類するっていうんだったら、一番組ずつ円グラフみたいなのを作って突出して、
必殺

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シリアスの項目とか体制とかっていうの作ってこう、 ああいういびつな、分析の仕方もあるかなあと思うんですけどね。
ね?何段階評価とかにして、こんなふうに…っていうやり方もありかなとは思うんですけど。
でもこれだとほんとに作品単体ずつでやらなきゃいけないから。まあひとめで位置がわかるっていうとこうなるのかなあ…。
あとは歴史の流れ的に発生の流れをこう…大系図みたいな。
一番最初に何が来るのかって言われると困るんだけど、こういうふうにわかれていく…。
体系図で、製作会社みたいな感じじゃなくっていうのは難しいんですか?
そうですね。なんか製作会社じゃなく…例えばこういうふうに大系でわけるにしてもキャラクターで、
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紋次郎

今も使っちゃったけど、アウトローっていうキャラクターと体制側の人とか…あと、忍者とか…浪人とかもアウトローに入っちゃうけど、
浪人とか、一応主人公のキャラクターでわけて、そこから系統図を年代順につけていくとかね。
例えば昭和40年だとアウトローで何っていう番組があったのが45年になるとこれとこれにわかれて、みたいにしてやっていくみたいなやり方もあるかなあとは。
まあ系統図にしなくても横に並べてやっていくとか。映画だと「蔵出し」のTVの次に映画をやろうと思ったときに、キャラクターわけにしてみたんですよ。
やっぱりみんなその、何を見たいかって好き嫌いだと「剣豪の派手な殺陣が見たいんだ」っていう人は剣豪物でくくって、で、剣豪物バーッと集めて。
次にまあ、特殊なあれですけど、武士、ちゃんと雇い主がいる、そういう武士の、
きちんと侍の矜恃とか持って誇りをもって生きているキャラクターのお話っていうのを集めて、
そのあと、志士か。幕末ぐらいしか出てこないんですけど、「幕末の志士」ってやつで。まあ一応理想を持って働いている人たちで。
で、「忍者」ってくくりを作ってそれで「アウトロー」ですね、まあ「紋次郎」とかアウトローってわけ方したんですけど。
あとは「プロフェッショナル」っていうことで盗っ人とか殺し屋とか。「仕掛け人」とかそういうのはこのへんに入るのかなあと思って。
で、最後に「女性モノ」があるんですよね。まあ女性キャラクターものっていうくくり方をして紹介していこうかなあと思ったんですけどね。
実際、時代劇を語るのにどういう流れを作ったらいいのかなっていうのがね、非常に難しいところで。
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現代劇が分類できないように時代劇も分類が難しいっていう。
難しいんですよね。だから一つ一つの、例えば「忍者もの」の流れを追えって言われたら、昔は「仮面の忍者・赤影」とかに代表されるように、
スーパーヒーローとしての忍者だったのが、そのさらに前、映画で「忍びの者」っていう…
一番最初は「忍びの者」なんですか?
だからその前はドロンって消えるっていう「児雷也」とか超能力者のような忍者たちだったんですよね。
で、それがそのあとに「忍びの者」が出て、これがリアルなスパイ合戦の「スパイとしての忍者」っていう描かれ方をされて。
「忍びの者」の主人公って…。
市川雷蔵さん。
あ、僕これ見ました。二つの里があってっていうやつですよね?
そうですよね。で、わりと飛んだり跳ねたりじゃなくて、くらーい中でジーッとしてるような。
「カムイ伝」みたいな話ですよね。
ええ、そうです。
「忍びの者」が先なんですか?「カムイ伝」より。
「忍びの者」が先だね、たしか。ただね、白土三平の「カムイ伝」じゃなくて、「ワタリ」っていうのがたしか「忍びの者」と同じネタ使ってるんですよ。
どっちが先だったのかなあ(笑)。
やっぱ「忍びの者」か…。
「ワタリ」のTV版が「赤影」なんですよね?こないだの原口さんのお話だと。どっちが先なんですか?「赤影」っていくつもあるんですか?
「赤影」は東映が実写でTVでやったやつと、あとずっと後にアニメでやったやつが。
アニメって、たしか92年ぐらいにテレビ東京でやってたやつですよね。「怪竜大決戦」っていうのはどこなんですか?
あ、あれもこのへんですよ。あれはこっちの映画のやつで見てもらうと、たぶん…そのへんで怪獣ものがわりと続く時期があるんですよ。
怪獣ものというか、特撮時代劇みたいなのが。
(資料を見ながら)あ、66年とか。
あ、そうですね。
66年とかに「ワタリ」があって、でその後に「怪竜大決戦」っていうのが、忍者の戦いなんですけど、忍者がそれぞれに竜と大ガマになるんですよ。
で、城を挟んで巨大な2匹が戦ってるとまたそこに、クモばばあっていう婆さんがいて、
そいつの孫娘がまたクモになる術かなんか受け継いでクモになってダーッて三つ巴で(笑)っていう特撮時代劇。
まあ子供だましって言えば子供だましなあれなんで。でたしか「伊賀の影丸」があったはずなんだけど。
すごいですねえ。69年あたりもう末期ですねえ。
うん。どんどん減ってくんだよ、映画が。「伊賀の影丸」は何年だったかな。
63年にあるのとは違うんですか?東映の。
あ、ありますね、そうですね、「伊賀の影丸」。じゃあ63年から一気に飛ぶのか。
しばらくなかったんですね。
しばらくなかったんだ。
ですから子供向けとしてはそういう、特撮使った「伊賀の影丸」「ワタリ」「怪竜大決戦」みたいなあれがあってそれをTVでっていうんで、
「仮面の忍者・赤影」が作られて。結局「怪竜大決戦」で使った竜と大ガマなんていうのは「仮面の忍者・赤影」にも流用されて(笑)。
「怪」と「さくや」のように(笑)そういうのがあったりなんかして。子供向けのはそういう、忍者の流れがあって。
で大人のほうは飛んだり跳ねたりの忍者ものから「忍びの者」とかまあ、
こないだ映画化された「梟の城」なんかも63年に一回、映画になってるんですよ「忍者秘帖・梟の城」って。
ああ、工藤栄一監督のの。
そうそう。で、脚本が池田一郎って、あとで小説家の隆慶一郎という人になったんですけど、その人が書いて。
かなりもう、すっきりと絞り込まれた脚本だったんで、こっちのほうが評価する人は多いんですけどね。
そんなカンジでその頃また、山田風太郎原作もののブームなんていうのもあって。山田風太郎ものがわりと映画化されていって、続いていくんですけど。
山田風太郎の原作で、「甲賀忍法帳」とかって映画化されてるんですか?
「甲賀忍法帳」はなってないんじゃないですかねえ。あ、「甲賀忍法帳」はあれだ、渡辺典子かなんかが主演で…
それは「伊賀」じゃないですか?
あ、そうか。あれは「伊賀忍法帖」か。
「甲賀忍法帳」は勝負が始まる前に終わっちゃうんですよ。あ、そういうことは言っちゃいけないのか。近藤さん、原作は読まれました?
山田風太郎はごっちゃになっててわかんねえ(笑)。話がみんなごっちゃになっちゃって(笑)。
でも中身言わないと話できないんですよ。タイトルでなんとなくっていう会話がもうできない。
そうですね。だから忍者ものに限っていえば、そういう「忍びの者」「梟の城」それとか「十七人の忍者」っていうのとか。すっげーシリアスな。
あれはね、具合悪くなるくらいシリアスですよね。
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十七人いるのに、最後の一人さえ生き残って任務果たせばいいんだって、どんどん死んでくんですよ(笑)。人柱になって。
そんなのがあって。集団忍者がそういう感じで「十七人の忍者」みたいに流行った後に、TVのほうでまたわりと今度もっと個人的な、
個人的なっていうか「カムイ外伝」みたいに個人で活躍する忍者の話なんていうので「忍法かげろう斬り」なんていう、渡哲也とかが主演した、
完全にスパイというよりも傭兵のように雇われてっていう、必殺技をちゃんと持っててっていうようなカンジの忍者モノが出てきて。
その後しばらくは忍者っていうと、例えば「大江戸捜査網」とか「水戸黄門」とかの、
集団のキャラクターの中に一人忍者がいるみたいな扱いばっかりになっちゃって、
あんまり明確な忍者モノっていうのが、たしか無くなってたと思うんですよ。で、そこに映画で「服部半蔵・影の軍団」っていうのが作られて、
それが映画にあわせてTVシリーズも作ろうっていうんで、TVシリーズが作られて、そのTVシリーズがJACを使ったことによって、
また久しぶりに派手な忍者モノが帰ってきたっていう感じになるんですよ。で、もうそのあとは無いっちゃ無いですよね。
「世界忍者対戦・ジライヤ」とかは入れちゃいけないんですか?
あれは現代物だから(笑)どうなのかな。まあ「カクレンジャー」とかも忍者モノだけどっていう(笑)。
まあ時代劇っていうくくり方をせずに忍者モノっていうことだったら。
そうするともっと「忍者キャプター」だの、だからまた特撮ものとかの「スーパーヒーローな忍者」っていうのが、
またぐるっと回って戻ってきたような感じはするんですけどね。ただやっぱり現代には忍者ものがもう残ってないっていうところで。
こないだの「梟の城」が久しぶりに忍者ものだったなっていう。あ、でもCALの「水戸黄門外伝・かげろう忍法帳」がありましたね(笑)!
だからそういった意味じゃもう、一回りしたような感じなんで去年の「梟の城」みたいに
またその「リアルな忍者」っていうのが、きてもいいんじゃないかなっていう。
完全に産業スパイ的なね、そういうのが出てきてもいいんじゃないかなって思うんですけどね。そういうのが忍者モノではあって。
あとは…そうですね、まあ時代劇だと「素浪人モノ」なんていうのがわりと最近は絶えちゃってるんですけど「素浪人モノ」なんかはやっぱり。
「浪人モノ」だと高橋英樹とか「桃太郎侍」も浪人と言えば浪人で。ただ、偉い人の双子の弟かなんかで。権力は使ってないけど。
浪人と素浪人ってどう違うんですか?
俺の考えてる定義としては、一般的な定義はあんまり見受けられないんだけど、俺が考えるんだとしたら、
浪人ていうのは一応仕える家があったのが無くなっちゃって、「ぶらぶら浪人はしてるけどまだ仕える気でいるよ」というようなカンジの人が浪人で、
素浪人ていうのは「いや、もう働くのやだよ」って「もうこの身分のままでいいんだ」っていう。
きちんと職にありつく気はないんだよ、っていう感じの浪人のことを素浪人と呼ぶんじゃないかなって思うんですけどね。
風来坊みたいな。
風来坊みたいな。
今で言うと失職者とフリーターみたいなカンジですか?
そうですね。そんなカンジですね。はなっから就く気が無いみたいな。
だから素浪人の場合だと、「生まれついての素浪人」とかっていうセリフがあったりするんですけどね(笑)。
生まれてこのかた仕事をしたことが無いというような。
うん。だから親の代で浪人になって、子供の代で「もういいや」つって(笑)。
身分はあるけれども仕事はない。
ええ。仕事はないっていう。だからほんとに身分も侍って言っていいのかどうかっていうところなんですよ。
「仕えたことないんだったら、それは侍じゃないだろう」っていうことにはなって。
そういう「素浪人もの」だとTVの五社英雄がやった「三匹の侍」っていうのがまあ、かなりエポックメイキングな。
その前も浪人ものっていうのはあったと思うんですけど、「三匹の侍」っていうのはかなり、その後のフォーマットを作ったみたいな感じがあると思うんですよ。
たしか「三匹の侍」で初めて刀の斬る音とかそういうのを、ズギュッとかドギュッていうのを導入したとかっていう話があって。
それまでは人が斬られても音がなくて。ほんとにだから、竹光(たけみつ)当ててビュッとこう、布をひっかいたみたいな音しか入ってなかったのが、
効果音がガンガン入るようになったっていうのが「三匹の侍」っていうことになってるみたいなんですよ。
実際どういう音なんですかね?
わかんないねえ。どういう音するんだろうねえ。
黒澤明の映画の方がまだそのへんは、音は出るけど作った音じゃなくてわりとリアルな音にしようとしてるみたいだから。
黒澤映画の音に本物は近いのかなあっていうぐらいしか(笑)推測はできないですけどね。
その境にあるのかどうかわかんないですけど、古い劇画って斬られた擬音って入ってなくって、
斬られたあと人が倒れたバサッていう擬音みたいなのしかないんですよね。
むしろ最近の作品だと斬る音があって、みたいなのもあったりしますよね。
たぶん描く側の人間がそういうものを見たことがあると、つけ足してしまうみたいな部分っていうのもあるんでしょうし。
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そうですね。劇画でいうとさいとうたかをさんがわりとそういう音を、率先して描き込むようになったっていうのが、言われてますけどね。
それまでは拳銃の音がバーンとバキューンだったのが、さいとうたかをさんがズギューンとか、そういう凝った音を入れるようになったっていうのがあって。
「三匹の侍」はほとんどそのフォーマットをひきずって、「三匹が斬る」と一緒やないか、っていうぐらいまでいくんですけど(笑)。
まあ、その間、人数が適当に変わる、二人しか浪人がいなくて、一人は普通の町人がくっついてくみたいなので、
例えば三船敏郎の「荒野の素浪人」っていうのなんかは、三船敏郎と大出俊さんだったかな?二人が浪人者で、
もう一人がコント55号の坂上二郎さんがすっぽんの次郎吉っていってくっついてくる、三人組が旅をするみたいなカンジになってて。
だからほとんど「三匹の侍」のフォーマットそのまんまっていう感じなんですけどね。
ただ、その三船敏郎のやつで新しかったのが、三船敏郎は黒澤監督の「用心棒」のキャラクターそのまんま持ってきたみたいな感じなんですけど、
もう一人いる、大出俊さんが、さる藩の元殿様だったんだけど、それが結局藩が潰れたんで浪人してるっていう設定で拳銃を持ってるんですよ。
浪人の癖に刀使わないで(笑)拳銃で戦うっていうカンジでちょっと変化を持たせてっていうのがあって。
それで、それよりちょっと前に近衛十四郎さんっていう、松方弘樹のお父さんなんかが、映画でずっと悪役とか敵役やってた人が、
映画の「柳生武芸帳」シリーズっていうので主役張って柳生十兵衛の役やって、かなりシリアスな殺陣を。
もうきちんとこう、お互いに必殺技みたいな感じを出したりせずに、ほんとに泥にまみれて戦うみたいな。負けちゃったりするんですけど(笑)。
すげえ卑怯なふるまいとかしたりするんですよ。
「うわああー」とかって言って逃げたり。
ほんとに勝つことに固執した戦い方をしたりっていうキャラクターをやって評判を得たんですけど、
そのあとTVのほうにきて、それまでずっとシリアスな演技だったのをコミカルな演技を開発して、「素浪人・月影兵庫」っていうのをやって。
それが「素浪人・花山大吉」っていうのに移ってっていうカンジでやっぱりヒットして。
それなんかはまあ、浪人者が一人で旅しててヤクザ者が一匹くっついてくるっていう、二人旅っていうフォーマットでやってて。
苦手なもの何でしたっけ?
苦手なのはね、最初は猫だったんじゃないかなあ。で、「花山大吉」になってからは猫が嫌いじゃないっていうことになって。
結局「月影兵庫」っていうのやってたら、原作者が、
原作シリアスなのにすごいコメディになっちゃってるから、なんか原作者が怒ったとかなんとかっていう話があって。
「これ以上うちの原作でやってくれるな」っていうことになったらしいんだけど、人気があるんで続けたいって言って
「じゃあ一旦終わるけど、次週から『花山大吉』と名前を変えてやる」って言って、ついてくる、品川隆二っていう役者さんがやってた、
焼津の半次っていうやくざ者だけはそのまんま出てるんですよ。
で、また月影兵庫とそっくりな浪人と会ったもんだから、第1話で。「月影のだんな!」って言うと、「いや、俺はそんなやつじゃない」って話が(笑)。
おんなじ役者がやってるんだから「そっくりやんか!」っていう。で、ついてったら「ダンナだったら猫が嫌いなはずだ」って言うと、
猫に全然驚かないっていうんで、「ありゃ月影のダンナじゃないんだ」って。
でもまあいいやってついてっちゃって(笑)シリーズはそのまま続くっていう(笑)。
おからが好きなのは変わらないんですか?
おからが好きなのは「花山大吉」になってからじゃない?違ったかなあ。
そうなんですか。とにかく食べ方が汚いんですよね。
そうそう。グワーッて。とにかく宿場に着いて飯屋とかに行くと「おからはないのか、おからは!」って「何だこのやろう、おからもないのか!」つって(笑)。
それがもう見事なキャラクター造形というか、設定で。焼津の半次は蜘蛛が嫌いとか、そういうのがあって(笑)。もうほんとに漫画のような。
最近のドラマ無くなりましたよね、そういう何が嫌いとか。
そうだね、そういう細かいのないね。元は殿様だとかね、そういうのはあっても。
そういう、嫌いなものとか好きなものとかっていう設定は、あんまりないですよね。
そういった意味ではそういう完全にコミカルな作品自体もなかなか、現在はないんじゃないかっていう。
「水戸黄門」かなりこっちに入れたけど、そんなにコメディなのかって言われるとねえ、難しいけど。
「暴れん坊将軍」と同じぐらいの高さかなっていう気もしますよね。
そうだよね、うん。
NHKの「お江戸でござる」が全てを引き受けて、みたいなことに。
そうですよね、うん。だから今ね、「花山大吉」とかも見せたらね、若い人も楽しいんじゃないかと思うんですよ(笑)。
「浪人モノ」はそんなもんかなあ。その後は…浪人ものも三船敏郎が亡くなってからそんなにないもんなあ。浪人の似合う人っていうのがいないからなあ…。
役所広司とかは定職に就いてない感じっていうのが出てると思うんですけど。
そうですね。
浪人役以外では侍ができないんじゃないかっていうぐらいの。「どら平太」でちょんまげ結ってたときは、ちょっと「あれ?」っていう。
役所広司さんは「八丁堀捕物ばなし」っていうのできちんとした同心とかやってて。ほんとにすごく真面目な捕物帳だったんで。
あれは浪人じゃなくて、ちゃんとやってましたね、同心役を。
最近TVで見る役所広司さんって、ざっくばらんなというか天衣無縫な感じだと思うんで、TVだけ見てるとやっぱりそういうイメージの方が強いんですよね。
まあ実際「合言葉は勇気」とかね、あれそのまんま時代劇でやったっていいんじゃないかっていう(笑)感じなんでね。
そういうのが欲しいですよね。時代劇に!。
温故知新じゃないですけど、もっと時代劇に広がりがほしいですよね。
近藤









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こないだ中村敦夫さんに「紋次郎」のころの話インタビューしたら、やっぱり中村敦夫さんも言ってたのが、
市川崑さんが「股旅」っていう自分の映画撮りたいからその為に、お金がないからTVシリーズを撮ってお金を儲けて、それを製作費にして作ろうと。
で、まあ股旅ものの「紋次郎」やっておけば、練習台にもなるっていうんで始めて、「主役もあんまりギャラを払わないでいい人がいい」っていうんで、
俺が選ばれたようなもんなんだよ」って。ただほんとに、イメージ的に、市川崑さんのイメージ画があったのかな?「紋次郎」の。
楊枝が長くて、笠を普通の三度笠よりかなり大きくしたいって言って、そうすると顔が長くないと駄目だとかっていうことだったらしくて、
それで「あの中村敦夫ってぴったりじゃないか」っていうんで、それでキャスティングが決まったとかって。
中村敦夫さんもちょうどその前に大河ドラマに出て、だいぶ人気が上がったんで、非常に時代劇のオファーがあったらしいんだけど、
どれもこれも、ちゃんと月代(さかやき)を剃った髷を被んなきゃいけないっていうんで、「あれ、面倒で嫌なんだ」って。
で、「紋次郎」だったら地毛を活かしてやれるっていうんで「じゃあそれがいい」って言って決めたんだって(笑)。
お互いになんかそういう、おもわくがあって(笑)。
いい話ですね(笑)。
それで中村敦夫さんが言うには、お金をプールする為に撮り始めたんだけど、
市川崑さんが結局、撮り始めちゃうと作品にのめり込むから、全然お金を残そうとしない(笑)。
しかもそのうちに中村敦夫さんが、あの人は俳優座でしたっけ?それでわりと演出とかもやったりしてたみたいで、
演出も興味を持ってて市川崑さんの撮影を見てたそうで、結局助監督っていうのは監督についてても小間使いみたいなのやらされてるわけじゃないですか。
それが主演だから、わきで崑さんの演出ずっと見てたら、なんか、教わってるみたいな気になってきて(笑)
で、「いや、これは俺もやりたいな」って言って監督一本やることになったら、「いや〜、2本分の予算使っちゃって」って(笑)。
「全然お金をプールしようという頭がなくなっちゃった」って言ってたよ(笑)。でも「紋次郎」は見てるとね、お金かかってるなっていうのがわかりますよ。
わかります?
近藤



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近藤
うん。だって橋をね、わざわざ、ちょうど橋の架け替えかなんかの話で、
新しい橋を架けてるところを撮っておきながら、最後にそれ燃やして落としちゃうのね(笑)。
それとか家建ててそれまた燃やしちゃうのね(笑)。「いくらかけてるんだ、これ」っていう(笑)。
「全然、金のこと考えてないよ、これ」(笑)。
ああっもう5時間も話していましたね。長い時間お疲れさまでした。一応そういうことで何かしめて頂けると…(笑)。
一応僕らの気持ちとしては、「さくや」と「怪」が時代劇の新しい、一つの形をつくるのではないかという予感がしてるんですよ。
その辺に関して近藤さんの御意見を頂けますか?

そうですね。だからこう…ちょうど、廃れてしまったものが2つ絡まって復活するみたいな感じですよね。
「アウトロー」なものと「妖怪」…怪談っていうのはホラーとして残ってたりするんでしょうけど、
それ以外の「妖怪」と「アウトロー」な、体制側じゃない人間っていうのは滅びてたようなもんなんで
、それが2つ絡まって復活してくれたような感じなので。
また、この流れが消えずに続いて欲しいなと(笑)思っています。っていうカンジで。
どうもありがとうございました。
今度はもうちょっとね、きちんと何かまとめて(笑)。


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