No.3 傑作赤面ゑびす
近藤


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「赤面ゑびす」だとまたそういう、遊びの部分で、
意外とインターネット見てて気づいてないなって思ったのは、
大沢存昌さんの出演って気づいてないのかなっていう。
大沢さん自身が写真とか、素顔があんまり出てないっていうのもあると思うんですけど。
ねえ?なんかこう、鮫の入れ墨してね(笑)。宿の鮫吉親分とかいって(笑)。
「眠らない江戸」とまで言ってるんだし。まんま過ぎて気づかないんですかね?
ウソだと思ってるんですかね?

ねえ?どうなんでしょうね。テロップ見ればね、名前出てるんだからっていう(笑)。
意外と気がついてないです?
うん。気づいてないんだなあと思って。
なんかね、「眠らない江戸」っていうタイトルが「眠らない羊」っていう
田辺誠一さんのエッセイ集から来てるんじゃないかっていう書き込みがあったなあ。
あったんですか?そんなの。
うん。なんかファンの子が書いてるの見て「ぜんぜん違う!」とかって思って(笑)。
(一同爆笑)
したり顔で「違いますよ」とかって書き込むのもなんだなあと思って(笑)。
「赤面ゑびす」はやっぱり、本田さんですか?
そうですね、本田さんとあと…
本田さんはほんとにまあ、毎度この人はすごい人だなっていうのはあるんで。
もう本田さんは「ごちそうさま」っていうぐらい(笑)お腹いっぱいなんですけど。
結局これも撮影見に行ってたんで、その時にいた人で…
仁科貴さんがね、やっぱり印象深かったなっていうのがあって。話し込んだりもしたんで。
そうそう、現場で仁科さんが歩きながら鼻歌を歌ってたらしいんですよ。
その歌が「必殺」シリーズの主題歌で、川谷拓三さんが歌ってたやつだったそーで。




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「何でこの人、川谷さんの歌歌ってんだ?」って思って聞いたら、「親父の歌だ」って(笑)そういうのがあって。
しかもほら、猫みたいに鉄板の上「猫じゃ、猫じゃ」って躍らされる役だっていうんで、やっぱり御自分で猫の耳みたいになるようにって、
ちょんまげを上の方にこういうふうに、女の子みたいに付けさせてもらってとか。
首に鈴とか付けさしてもらってとかいうの聞いてると「みんなほんとに勝手に役作りしてんだな」っていう(笑)。
ノリノリな。
ノリノリで(笑)。「闇雲なめたら」なんだっけ?
「いけないよー」(笑)。
もう、みんな全開でしたもんね(笑)。本田さん筆頭に。赤星昇一郎さんも出て。
赤星昇一郎さんもなんか、あの頭の上のちっちゃい帽子みたいなのの紐をね、赤星さんだけ耳に載せてるんですよね。
あれは意図的に御自分でやってたみたいで(笑)。
個人的に僕、赤星さんすごい好きなんで、もうちょっと壊れててもよかったかもっていう。
わりとそうですよね。まあ、無口な役でしたからね。
でも織田無道さんが場面を喰っちゃってましたよねぇ。
でもすごいキャスティングですよね。織田無道はいる、赤星昇一郎はいる、ねえ?加藤哲郎さんは出てきてて、
もう一人のね、伊藤敏八さんって「スケバン刑事」でお父さんやってたんだって言われて、「ああ、そういうキャスティングかい!」って、
別にそれは意識してないんでしょ?「スケバン刑事」マニアだとか(笑)そういうわけじゃないんでしょ?
そういえば、原口さんって「スケバン刑事」もやって…。
そうそう、やってたんですよね。でもゑびす島は僕、すごい好きで。ゑびす島自体が少しおかしい島なわけじゃないですか。
で、六平さんの闇雲一味が加わって、そこに一番おかしいはずの又市たちが加わると(笑)。
一番まともな常識人が又市一行っていうのはすごいですよね(笑)。

そうですよね(笑)。
本田さんがご飯要求する時の「あーん」っていうのも、あれは本田さんにしかできないですよね(笑)。
「そりゃあ佐野さんもご飯持ってくよ」っていうぐらいの(笑)。
ゑびす島のデザインっていうか、そういうのも本田さんが作ったっていうか、
あの感覚っていうか世界を最初に持ってきたのは本田さんだっていうふうに聞いたんですよ(ひじ掛けに手を掛けるまねで)。
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そうですよね。ラストで鳥のまねするのもね…。何か突然決定したんだよねえ?。
本田さんの方から「鳥になりたい」って…(一同爆笑)。
俺が聞いたんだと、「甲兵衛は鳥になりたかったんだよ」とかって
「記念写真撮ってくださーい!」って追っかけたりしてる時に言ってたよ(笑)。
じゃあ甲兵衛は鳥になりたかったからなったんですね。
そう、逃げたかったんだろうなっていうのがあったんで。この島から逃げ出すために…。
本田さんが甲兵衛の役柄を自分のものにしてたからこそ、そうなったっていうことですよね。
そうですね。 ほんとにその、鳥になるシーンなんて現場では見てなかったから、
「何を言ってるんだろう」って思って(笑)。
「わかんないよ」と思いながら(笑)話聞いてて。すごいですよねえ。
だから本田博太郎さんのキャスティングでもう、
これは本田さんに決まった途端にもう、全部が出来上がっちゃったんだろうな(笑)っていう。
しかもねえ、あの奥さんじゃないけど、子供生ませてるのが、西崎緑さんで。
これがまた「必殺」ファンにはたまらないキャスティングっていうのがあって(笑)。
「赤面ゑびす」に出てくる嶋田さんは逆にこう、江戸にいて同心で顔が長いっていうと
「あ、中村主水」とかって、逆に俺なんかイメージ、あれでしたけどね(笑)。
「伊藤雄之助から藤田まことにスイッチ」みたいな感じがしちゃったんですけどね。
実際あれですよね、「赤面ゑびす」はゑびす島までの道の設定とか、いいですよね。
佐野さんが水に投げ込まれて溺れて「足が立つ」っていうあたりとか(笑)。 いいですよね。
本田博太郎さんも、渡ってきた方は、「お客様」ってコロッと手のひら返して(笑)歓迎してるし。
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4作中でいちばん拷問のシーンっていうか、普通の人が痛めつけられるのがいちばん痛いシナリオですよね。
そうですね。
お湯を飲ませるとか、演出がもうばっちりじゃないですか(笑)。
そうですよね(笑)。
見なおすたびに「うわーもう飛ばしちゃおうかな」っていう。
たぶんこうなるであろうっていう映像を撮られちゃってるから、 焼かれてるシーンとかはなんとなく
「芝居だし」って納得がいくんだけど、あの煮え湯の所だけはどうにも(笑)。

そうですよね(笑)。実際だって、ほんとに殺すっていうやり方じゃないですもんね。ほんとに、痛いことやってるだけですからね(笑)。
まだ「さっさと殺してくれ」っていう方が(笑)。
1カットで撮るのが気持ち悪いんですよね。割ってないから。
そうですね。カット割ってないもんね。でもほんとに作品のテーマ的にも、
言い伝えとかを意味もなくずっと守り続けるっていう怖さみたいなのが。
実際、どこの世界とかどこの社会にも必ず「こうしなきゃいけない」っていうのがあるのが、
スタートがどこだったのかはっきりしないものばっかりでね。
守ることによってこんな酷いことになるっていうのが(笑)。
最後の佐野さんのまとめも酷いって言えば酷いじゃないですか。「この島なりの幸せが…」って「おいおい!」っていう(笑)。
あのセリフが心にずーんとくるっていうか。
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そうですねえ。
あの原口さん製作のミイラもいい感じでしたよね。
ああ、ミイラはすごかった。ほんとに原口さんも大変でしたよね。昼は監督やって(笑)、夜は造形やって。
でも実際、この四人衆相手に戦うのとかもかっこよかったし。
刀の刃をおぎんの人形がカリカリカリカリって駆け登るのって、何話でしたっけ?
刀をかぷって噛んで、パキンって割るんじゃなくて、カプカプカプカプっていう。
田無道が投げた紐を噛みきって、やるんだけど首締められて…。
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逆襲されちゃうもんね。しかも…あれ、レーザー光線は第2話から出てきてたんですっけ?
又市レーザーが。敵が光を嫌がるんですよね(笑)。
やられるほうは何だと思ってるんだろうっていうのもありますけど(笑)。
あれはでも、かっこよかったもんなあ。
お札張って動きを止める っていうのもやってましたけど、指が額にぐりぐりっていうのがね。
障子越しの。
障子越しに、ええ。あれもね、特殊メイクとか使ったりとかせずにね、影絵でやってるのが。
楽しそうにやってたみたいですよ、なんか。とんちの世界で。
そう、「とんち特撮」っていう(笑)。
そんなふうに言うと怒られそうだけど(笑)。
いやでも、俺とんちってそんな悪いことじゃないと思うんだけどね。
だって画面がゆらゆら揺れてるのとかって、最新技術でやろうと思えば、
CGでも簡単にできるものじゃないですか。
それがCGとか一切使ってないとかって、「なんで画面あんなふうに揺れるの?」って聞いたら、
「カメラの前で火焚いてるんですよ」って言われて「とんちだ!!」って(笑)。
1話のオープニングのシーンなんかの陽炎の奥に行く又市ですよね。
まさかほんとに陽炎待ってるわけにいかないだろうからねえ。
実際、これ撮影見るまではなんか、
酒井監督に「又市レーザー出すんだよ」って言われて「なんのことだ」って思って(笑)。
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理屈ではさすがにあそこは説明できないですけど、絵としてすごいかっこいいじゃないですか。
だからなんとなくみんな「いいかな」っていう感じなんじゃないですかね。

あれ実際ほんとにね、又市の念が、ああいうふうに映像化されたと見ると、すごくいい効果ですよね。
3話のクライマックスで一度組み捨てられそうになって、
こう起き上がりざまに指が…あれがかっこいいんですよね。

そうそう、あれがね。
で、手の奥からカッて見開いた目が見えるのが。
「又市あぶない!今だ!」っていう感じなんですよね。あれかっこいいですよね。

そうですよね。
西部劇で「今から銃を…」みたいな、そういう感覚ですよね。
そうですね。あれほんとに「いいもの見つけたな」っていうね(笑)。
あれ監督が買ってきたんだって。自腹で(笑)。
駅の売店かどっかでレーザーポインタ見つけたときに
「あ、又市レーザーだ!」(笑)ってはしゃいじゃった、俺。
この回の又市はシリーズ中かっこいいカットの多い又市でしたね。
うん。そうだなあ…ほんとに「赤面ゑびす」は傑作ですよ。
…こんなもんですか?「赤面ゑびす」は。とりとめのない(笑)あれですけど。

つづく

次回更新予定は12/26になります


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