水戸老公(里見浩太朗)一行は松島へ。魚市場をのぞいた老公はうっかり魚網に腰を降ろし、威勢いい紀代(水前寺清子)にひどく叱られる。紀代は山清の女網元で、威勢の良さは松島名物だという。一行は山清の前で、紀代が男を怒鳴りつけ、追い返しているところに遭遇した。そのただごとならない様子が気にかかり事情を聞くと、男は別の網元の五郎丸権蔵(萩原流石)といい、水揚げが豊かな紀代の漁場に目を付け、山清の漁師たちに嫌がらせを繰り返しては、紀代に漁場を譲るようしつこく迫っているという。しかし紀代は、伊達政宗公からお墨付きをもらった漁場を絶対に売るつもりはないという。
山清の漁師と五郎丸の漁師たちが喧嘩になっているところを助三郎(原田龍二)と格之進(合田雅吏)が助けた縁もあって、一行は山清に世話になることになった。するとその晩、老公は紀代に夫婦になってほしいと懇願される。紀代は、自分が女だから五郎丸に甘く見られているのではないかと不安に感じており、老公の人柄を見込んで騒動が収まるまでの間、夫婦のふりをして欲しいと思って頼んだのだった。老公はとまどいながらも、紀代が親からはぐれた子供たちの面倒をみるなど、度量の大きい女性であると見込んでいたので、引き受けたのだった。奇妙な二人の夫婦生活に助三郎と格之進は笑いが止まらない。
ある日、「最後の話し合い」に来た五郎丸が紀代に会いに来た。老公は紀代の夫として、そして山清の主人として五郎丸に漁場を売るつもりはないとはっきりと告げた。脅しが効かないとわかった五郎丸は、山清の舟小屋に火をつけるという強硬手段に出る。堪忍袋の緒が切れた紀代は、刀を持って五郎丸のところへ乗り込むが、老公は夫として紀代をなだめたのだった。
その頃、紀代と仲たがいをして六年前に家を飛び出した一人息子の宗太郎(細山田隆人)がこっそり松島へ帰ってきた。そのことを知った五郎丸は、宗太郎を利用して漁場を手に入れよう企てる。そのことを知らない紀代は、五郎丸と手を組んだ松島番所役人の青戸富三郎(山内としお)に宗太郎の人相書きを見せられ、宗太郎が押しこみ強盗の下手人であると告げられ驚いた。五郎丸は漁場を譲れば宗太郎を安全に逃がしてやると紀代に取引を持ちかけたのだった。
紀代は息子のため、五郎丸に漁場を引き渡す決意をし、証文に判を捺した。しかし、五郎丸は約束を守らず、紀代と宗太郎は捕えられてしまう。そこへ老公一行が現れ、お娟(由美かおる)が掴んだ証拠によって、五郎丸の悪事は明るみになり、宗太郎は母の深い愛を知ったのであった。老公は、市場で動き回る紀代、宗太郎、山清の漁師たちの姿をほほえましく思い、松島を旅立ったのだった。