近藤ゆたか1964年生まれ。東京の下町・玉 ノ井に生まれ育つ。
早稲田大学理工学部在学中よりイラスト・マンガの仕事を始めいつの間にか時代劇研究家となる。
編・共著に『蔵出し・絶品TV時代劇』フィルムアート社。
漫画の代表作は『大江戸超人秘帖・剛神』原作滝川一穂。
イラストでは『空想科学読本』柳田理科雄・著などがある。
現在は『月刊B.L.T』東京ニュース通信社・刊で4コマ漫画を、
『SPA!』扶桑社・刊で『空想科学研究所』を連載中。
近刊『百鬼夜行解体新書』コーエー・刊で百の妖怪のうち1/3ぐらいのイラストを担当。
プロレス団体『レッスル夢ファクトリー』の興業にはたいてい顔を出している。

No.1   漢の七人みさき
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京極夏彦「怪」全4話の終了しましたが。
近藤さんの感じた見どころって言うか、京極夏彦「怪」のもつ魅力とはどんな感じですか?

うーん。4話通してのそれぞれの見どころとかいうんだとねえ…。
まあ、田辺さんとか遠山さんとか佐野さんの魅力っていうのがある上で、俺なんか個人的にはね、
やっぱりどうしても夏八木勲という(笑)。
いつからファンなんですか?
完璧にファンになったのは、「白昼の死角」っていう映画をたしか中学生の頃に…
中学生ですか?
たしか中学生だったと思うんですよ。
「狼は生きろ、豚は死ね」ですよね?
そうそう。で、完全に「ピカレスクロマン」とか言ってて、もう悪人の映画でね。
中学生で、結局友達誘わずに一人で見に行って…出てきてなんだか「ああ、俺も悪に生きよう」と思いながら(一同爆笑)。
主題歌レコード買ってっていうカンジだったんで。
主題歌って誰が歌ってたんですか?
え?宇崎竜童が。まだダウンタウンブギウギバンドの頃かなあ。
最後って身代わりを…。
身代わりに火付けて…泥酔させてガソリンまいて火付けて、でブアーッと炎上してる中、貨物船に乗って。
だから生き延びる悪党だよ。ほかの仲間はみんな死んで。
主題歌なんかも含めてトータルイメージで悪人っていう。
そうそう。そうですね。
それで結局「夏八木勲は悪だろう」と思ってたのが、最近「将太の寿司」とかそういうので「いいおっちゃん」やってて、




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「夏八木あんた悪だろう。ほんとは悪いんだろう」とか思いながら(笑)。
で、この「怪」でようやくね、まあいい人なんだろうけども、かなり元は悪党っていうかね。
やっぱりこう、紆余曲折あって江戸で悪事を働いていたんだなっていうカンジで出てきたんで、
もう「これは夏八木ファンは大喜びだな」って。
夏八木ファンにとってはやはり「悪」!!ってカンジですか?
だって、デビュー作は「牙狼之介」っていうんだよ。東映でね、五社英雄監督が撮ったの。
いっぺんに2本撮ってね、連続公開してですね、こういうほら(資料を見せる)。
うわー。同時上映は何なんですか?
同時上映はね…。
(資料を見ながら)「お尋ね者七人」ですね。
こっちが第2弾。「牙狼之助・地獄斬り」。
すごいですねキャッチコピー。 「新スター夏八木勲」なんですね。
「抜いて斬って0.3秒!」懐かしいカンジが…。
「抜きざまに三人、振りおろしてまた五人!」

「今度は何をしでかす?ひげづら第2弾!」とかね。「ひげ面の新人」だったんだ(一同爆笑)。
ひげは昔からなんですか?
昔からだよね、うん。
最初からひげ面だったんですね。アオリはすごいけど、かっこいいですよね。
うん。
五社英雄監督で。フジテレビなんですね。
まだフジテレビにいながら映画撮ってたって頃かな。
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昔の映画とかって、見に行くと、映画館で拍手がおきたりするじゃないですか。あれが楽しいんですよね。
そうそうそう。そうなんだよねえ。俺なんか「七人みさき」で、夏八木さんの所は拍手だね(笑)。
うずうずしながら。またこう、撮り方もうまいじゃないですか。
あの田辺さんと二人で話してるところで、あれはほんとに演出っていうより光の演技みたいな感じで。
だんだんこうしんどい話をね、告白してて、しんどい話してるとだんだん日が暮れてくるのか、スーッとねえ。
だんだんさっきまで明るかったのがくらーくなっていって、
だんだん画面が暗くなっていって、最後ほんとに真っ暗な中に二人でっていうね。
ああいうあたりとかね、最近のドラマとかじゃああいう凝ったものは見られないんで、ぜひ楽しんでもらいたいなあと思うね。
「七人みさき」それで終わりですか?
いやいや(笑)。
近藤さんにとっては「七人みさき」の一番の見どころってやっぱり、御燈の小右衛門っていうか、夏八木勲さんですか?
夏八木勲!!。
いちおしですか?
いちおしで!!。
実際にね、夏八木勲を上手く見せてるの、さっき話したあの光のでね。そう照明もスゴイよね。
他のところだって、殿様のシーンなんか、話し込んでる辺りなんか照明がね、ぐるーっぐるーってね。
動いてるの、「一体何やってるんだ」って思うだろーけど、あれもたぶん、
「太陽が照ってる所に雲がえらい速さで動いてて、御城の中照らしてるのかな」っていうふうに解釈すると、
外の天気まで想像できるみたいな見方してるんだけど。
あの広い感じと暗い感じとで、イメージが沸くっていう感じがありましたよね。
そうね、うん。後は…なんですかね。後はあれですね、東雲右近さんなんていうのは、かっこよかったなあ。
実際ねえ、ほんとに冒頭でいきなり「ダダダダーッ」ってきて「キャリーンッ」っていうのとかね(笑)。
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昔の劇画のような。
そうですね、うん。
カメラの角度とかも小島剛夕先生のような感じっていうか。 東雲右近さんの話って脚本の方ではもっとあるんですよね。
「某流の免許皆伝で相当使える男です」って褒めるシーンとか、あるんですよね。

そうですよね。
たぶん四作のなかで「七人みさき」って、侍のかっこよさっていう意味では
一番かっこいいんじゃないかと思うんですけど。又市とのからみとか、かっこいいですよね。

うん。で、またなんかねえ、お金落として言いわけしてて(笑)。
「人には言えぬ事をいろいろしてきた」って、「あ、この人は仕掛人だったんだ!」って(一同爆笑)。
なるほど(笑)。
「江戸の仕掛人、やって金作ってきたんだ!」って(笑)。
ちょっとこうねえ、必殺ファンは大喜びという感じで。
一作目からもうすでにそう見えるんですね。
見えますね。
そうか、剣の達人が人に言えない仕事で極端な大金稼いでくるって言ったら、それしかないですよね。
まあねえ、ほんとに殺しの仕事請け負ってっていうぐらいしか。
まあ、辻斬りだったらね、小銭ぐらいだろうしっていう感じですからねえ。
そうですよね。「必殺」の報酬って最初の頃は、けっこういつもすごい金額だなあっていう。
一回やったらもう次の週はしなくていいんじゃないかっていう(笑)。

そうでしょう?ね?(笑)
だから、きちんと元締めとかについて、いい金もらって仕事して、
もうこのへんで切り上げるっていうふうに帰ってきたんだろうなっていう(笑)カンジがしてね。
そのへんが「いいなあ」っていうふうに思いますけどね。
あと、遠山景織子の人形も「七人みさき」で初めてっていうか、実際出てきて第1話で、あれが。
あの人形の、何割りっていうんでしたっけ?なんとか割っていうんですよね。顔がパクってなるっていうの。
知らない(笑)。
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梨割っていうのかな?いや「がぶ」って言うのか。人形の顔がパクっとこう、牙が出てねえ、
目がキョロっとなってカッと開くっていう、あれ見たときはね、ほんとにギミックがついてあれやってるっていうのはねえ?
すごくいい仕上がりだったなって思う。
やっぱりねえ、人形持って戦おうとして「どうすんだろうな?これ」って思ってたら「ガシャーンッ」って。
あの瞬間で勝負でしょうね。本物であることによってCGだとか、コマ割りだとかにない迫力が出てますよね。
うん。
戦闘態勢って感じでかっこいいですよね。
うん。そう。
すごい練習したみたいでしたよ、遠山さん。居合の鍔が外れる瞬間みたいな、ああいう気持ち良さですよね。
ああ、そうですね。うん。
近藤さんにお尋ねしたかったんですけど、前に中島かずきさんとお話したときに、
「コウエモンビが…」っていうお話をされてましたよね?
あれが妖怪だっていうお話をされてましたけど。

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妖怪で「コウエモンビ」っていうのがいるんですよ。
まあ、要は火の玉みたいなもんなんですけど、それで、火の玉で「コウエモンビ」っていう名称が付いたのがあって。
でも最初、小右衛門って聞いても、「別にその妖怪の名前を付けたわけでもないんだろうな」って思ってたんだけど、
結局火を扱う人で、脚本読むと、遠山景織子をがんじがらめにした時の縄が「火縄」って書いてあるんですよね。
そうすると、多分、火縄に火をつけてふわーっとかって浮かせて、火の玉みたいなものを見せることができるんじゃないのかなと。
それで結局火炎使いで。だから画面の中ではこう、地面に火がバーッと走ったりみたいな、
火炎使いってことで小右衛門っていう名前にしたのかなってコト。それで友人の森野さんが。
僕は最初、そんな細かいところまで気づかなかったんですよ。「夏八木勲だー」って大喜びしてて(笑)。
そしたら、水木先生のアシスタントされて、今はもう独立してる漫画家で「地獄童子」っていう漫画描いてた人が。
はい。知ってます。
彼が「近藤さん、コウエモンビってあれだよ!」って言って
「えーなんだっけコウエモンビ…ああ、あの火の玉のやつ?」って。
だから「そういうネーミングなんじゃないの?」って話になったんですけどね。
そうすると、たぶん又市から何からこのメンバーっていうのは、みんなその、
「得意技を駆使することによって妖怪と思われるような人たち」なのかなっていうカンジがしてね。
「隠神だぬき」だと、谷啓さんの事触れの治平は動物使いでたぬきのフリしてましたからね。
そういうたぬきの化け物だと、みんなに思われるみたいなカンジで。
たぶん遠山景織子ちゃんだと、ああいう人形を使ってるから、
それこそ「七人みさき」の朝岡実嶺さんがやってた幽霊にあの人形が見えたりとかっていうようなことで、
みんな結局その、妖怪に見られるような特技を持っている(笑)人たちなのかなっていうのが、
その時ちょっと気がついてね。
近藤さんの思い入れだけじゃなくて、小右衛門が作品を読み解く上でキーになっているキャラクターだっていう部分ですよね。
はい。そうですね、うん。
ヒントをいろいろと与えてくれるみたいな。
ええ。そうですね。実際立場的には、中島かずきさんも言ってるけど、小松政夫さんと同じ立場で別な道を選んだ人で、
結局それぞれにいい方向に選んだのかどうかわかんないですけど、別な方向を選んだんだけど、両方とも悪い結果になって、




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最終的に出会ってお互いに決着をつけるみたいなカンジになってて。
まあ、最後の殺し合う所は抜きにしても、それまでの歩み方が一緒なわけじゃないのに、
おんなじ事件に関わってくるっていうのが、結局どの道を行っても
うまくいかなかったのね(笑)っていうカンジでね。
侍の「さだめ」っていう。
侍の「さだめ」っていうのは無情なもんだなあっていうね。
やっぱりちょっと古い侍映画っていうのはそういう末路に。
「幸せに暮らしましたとさ」っていうのではないですよね。

ええ。ほんとに任務成功したから「よかった。ばんざーい」で終わらないですからね(笑)。
終わったらじゃあその後どうすんだっていう所までやるから。
そういった意味じゃ、京極夏彦「怪」の又市たちが立てる作戦っていうのは、
妖怪の仕業に見せかけることによって、
余計な被害者を出さないみたいなのはありますよね、後始末っていうか。
超常的な現象だからっていう。
ええ、しょうがないんだっていうね。

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