No.2  トラウマの隠神だぬき
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「隠神だぬき」なんかほんとそうですよね。
そうですよね。実際だから、「七人みさき」も狂った殿様を殺しちゃってるんだけど、
死んだのは妖怪のせいだっていうことになれば、
御取り潰しとかにならずに上手いこと存続できるんだろうなっていうようなカンジで、
その辺はだから、妖怪騒ぎで収めるっていうのは、
京極さんのアイディアっていうのはすごいなあっていうね。
こないだのロフトの時に「怪談と妖怪の時代劇の違い」っていうのを京極さんが力説してましたけど。
たしかに妖怪っていうのはわけのわからない、 怖い現象を
「実は妖怪のせいだったんだよ」ってすることによっておさめるっていう、
安心してお話にするっていうのかな、妖怪のせいにしてみんな安心するっていうような、
そういう使い方をするものなんだっていうのが、「怪」においてはね、
実際に妖怪はいないけれども妖怪の仕業にしておさめちゃうっていう作戦は…。
日本の言い伝えだと、天狗の踊り場みたいな話ですよね。
熊が集まるから危険だから「あそこは天狗が来るんだ」って言って人が近づけないようにするっていう。
特に農村とかに伝わってる言い伝えって、わりとそういうのがあったりするじゃないですか。
「夜、銭勘定すると…」みたいな。

そうですね。でもほんとになんか、わけわかんない現象を妖怪ってのがやってるんだって言って、
しかもその映像っていうか、デザインまで作っちゃうっていうのはすごいですよね、


「おまえ、見たんか!」っていう(笑)。「こんな感じのやつがこういう悪さをして」っていうようなふうにしてるっていうのは。
で、またそういうやり方で悪人を退治するっていうのは、結局「必殺」よりも、はるかに一歩踏み込んだやり方だなっていうのがあって。
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後始末がきれいな。
まあ「必殺」とのからみで言うなら、イメージ的にも「同心役は嶋田久作さんで」っていうカンジのがね。
だから「隠神だぬき」の楽しみも、そういう楽しみ方が(笑)ありますけどね。
僕は嶋田さんけっこう好きで見てますけど、熱血漢で正義漢の嶋田さんって初めて見たっていう感じで。
そうですよね。
やっぱりこう、なにか企んでてみたいな役が多いじゃないですか。
そうですよね。ええ。
「さくや」でも、正義の味方で(笑)。
しかもなんかちょっと長髪でね。
女の子たちが似顔絵描いたら美形キャラクターになっちゃうんじゃないかっていうカンジでね(笑)。
かっこよかったですからね、うん。ほんとに今回、「怪」も「さくや」も嶋田さんにとって新境地というかね。
「怪」では熱血漢、「さくや」ではちょっとクールな感じで。
ねえ。ギョロッとしてね。
どっちも正義で。「ああもう思い入れ入れても誰にも怒られないな」っていう嶋田さんが(笑)。
「悪人じゃん!」って言われずに済むみたいな。

そうね(笑)。
キャラクター的にも、悪人面してるんだけど実はいい人とかね、そういうほうがかっこいいですからね。
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神戸(かんべ)さんは思い入れないですか?
え?いやぁ神戸さんもいいッスよ(笑)
正直、なんか騙された佐野さんがかわいそうっていうか。百介かわいそうでしたよね。
かわいそうだよね(笑)。だから、又市たちはひどいですよね(笑)。
失意の底で立ち直ったおじいさんをもう一回失意の底に(笑)、しかも百介の手で。いくらなんでもそれはやりすぎだろうっていう。
そうですね。
2話はもう最初から、たぬきの樹を調べに行った佐野史郎をおどかしてみたりとか。
「もっとやさしくしてあげてもいいのに」ぐらいの。百介がいいように利用されたっていう回ですよね。

でもそういった意味では、「七人みさき」のときに夏八木勲さんに「この小悪党が」とかって言われてても、
「又市、小悪党って言われてるけど別に悪いやつじゃないじゃん」とか思ってたのが、
なんか「隠神だぬき」見ると「あ、又市悪いやつだなあ」っていう(一同爆笑)。
佐野さんのことコケにしてるっていう(笑)。上手いこと使ってね、仕掛けの一つにしてるんでしょうけど。
そのへんがなんかようやく「隠神だぬき」ではね、出てきたカンジがして。
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近藤さん的には、どうでしたか?初出演。
え?
初出演。
いや、俺は意外に色々出演してるから…まあ京都デビューかな(笑)?
俺が出たとこは別にそんな(笑)。寒かったなっていう(笑)。意外とね、俺が出てんのわかる人とわかんない人が。
いやいや、わかりますよ。
わかります?
ええ。
いやあの、「隠神だぬき」の薪能の客の中にいて。
けっこうでも、あれですよね。メインどころのそばで。
そばにヒゲはやしたのが一人だけいて(笑)。
ほかはみんな、ねえ?きれいな、どっかの若旦那みたいな人たちばっかりなのに、一人だけヒゲはやして、
大工の棟梁みたいなかっこして。一人だけリアクション早いんですよ(笑)。
お母さんがたぬきの死骸抱いて「長二郎!」とかってやってる時に、ハッと気がついてうなずいたりして動き出すのが一番俺が早い(笑)。
勝手にねえ、俺は「江戸から流れていった大工」っていう(一同爆笑)設定をね。
江戸っ子だからねえ(笑)短気だし、合点が早いとかって。一人だけ早いから怒られるかなと思ったんですけどねえ。
そんなにやっぱり(カメラを)回してらんなくってOKになったのかなあ(笑)。
やっぱり京都は寒かったですか?
寒かったですね。まあ僕はほんとに大工の棟梁みたいな格好だったから、ちゃんとズボンみたいなの穿いてたんでよかったんですけど、
やっぱり他の若旦那風の人たちなんかは、あんまり下に穿けなかったみたいなんでかなり寒そうでしたね。
薪能の舞台とか、よく作りましたよね。
あれって、舞台は当然違うけど、同じシーンっていうか、「魔界転生」の冒頭のシーンもあそこの薪能のあれなんですってね。
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じゃあ「魔界転生」ともリンクしてるんだ(笑)。
「隠神だぬき」だと、能面被って人殺して歩く、あれなんか怖くて良かったですね。
実は現場見学に行ったら石丸謙二郎さんがやってるんだって知ったんですよ。
これはオープンじゃない話かもしれないですけど、
石丸さんが辻斬りやってるんですよ。あんな変な踊りしながら。
「いいかなあ?」とか言って。「あ、のってるな、この人」ってそんな感じで。

しかも首斬るとき、上からじゃなくて下から刃を持ってきて、
上に持ちあげて斬るとか、「怖え〜」と思って。
ねえ?後ろから斬られるよりはるかに怖いですよね、斬られる方は。
で、なおかつ昼間になってから事件現場で戸板に死体載せて運んでる時に神戸ちゃんがこう、
生首を布でくるんだやつを落っことしてごろごろごろっていうのは(笑)
あれほんとにね、作り物でリアルなものやるよりも、あのほうがはるかに怖いなっていうカンジで(笑)。
踏んでいくのわかりました?
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死体踏んでくの、うん、わかりました。あれ、すごいですね〜。
あれは石丸さんが踏んでいきたいって。「いいから踏んで」って。
え?じゃああの、おばちゃんとかに「踏んでいいすか?」つって?このシーンはほんとに怖かったなっていうのがありますね。
なんだ、そうか、石丸さんが中に入ってるって聞くと、ほんとは長二郎の仕業じゃなかったのか(笑)!!。
なんかねえ、石丸さんが長二郎の仕業に仕立てて又市たちもだまされたんじゃないかっていう気になりますね(笑)。
嶋田さんの予想が当たっていたのか!
そうそう、当たっていたのか(笑)。ほんとにこのへんのシーンは怖かった。
でまたほら、画面が切り替わるときにカメラをくるーっと回してるでしょう?あれがまた怖いなあって。
グリッグルグルっていう音ですよね(笑)。謎のマシーンを使って撮ったやつですね。
そういうマシーンがあるんですか?
ええ。「これ何て機械ですか?」って言ったら、別になんか「まわし機」とかって。「じゃあグルグルって呼んでいいですかね」って。
でもあれですよ、樋口真嗣さんのインタビュー読んでても、特撮の現場もなんか、みんなそんなネーミングばっかりみたいですよ(笑)。
呼びやすい、わかりやすい名前で。そっか「グルグル」かあ。
グルグルの写真とかもインターネットで載せてくれないかな、「これがグルグルだ!」(笑)。
やっぱりあれですよね、たぬきの仕業っていうことにしてって、ほんとにこの、おじいさんが悲しんでるところを、
又市たちがそういうことやってんのをはたで見てると「ひでえなあ」と思いながらも、
おじいさん的には谷啓さんに癒されていくっていうカンジがあって。
やっぱりその…「恨みっていうのは、晴らせばおしまいなのか」っていう所が、結局、晴らしたって帰ってこないって言や帰ってこないわけで
そのへんの恨みじゃなくて悲しみの行き場、おさえ方みたいなのがこれはすごく上手いなあと思って。
ほんとに、「必殺」シリーズなんかだと「恨みを晴らしたい」って言って、殺してもらってみんなそれで済むのかな?っていう感じですからね。
そんなにすっきりするのかなあっていう。ましてやねえ、自分の手で復讐できればね、まだこう、
カタルシスあるかもしれないけど、結局番屋は梅安さんの仕掛けみたいに原因不明な感じで、
殺されたのかどうかもわからない死に方してたひにゃあ「すっきりするのかなぁ?」と思うんだけど(笑)。
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逆に悶々とするかもしれないですね、恨みの相手が病気で死んだとか言われても。
じゃあこの怒りのやり場はどこにっていう。

そうそう、そうですよね。でね、一応自分が依頼人でお金払ったにしても、
それがほんとに殺してくれたのかどうかね(笑)、 わかんないって言やわかんないですからね。
そういった意味では、そういう納め方ではない。いい納め方するもんだなあと思って。
非常に感心しますね。あとは何がありますかね…。
2話で、佐野さんの奥さんが出てきてっていう、そういう撮り方でしたよね?あのシーンとか。
その、作品のなかで遊ぶみたいな部分が2話からぐぐっと増えてきて、
知ってると面白い話が増えたような気がするんですけど。

そうですね、たしかに。佐野さんの奥さんのことは僕も知らなくて(笑)。
後で聞いたら「あ、なるほど」って(笑)夫婦であんなことやってたんだって(笑)。
逆に言えば、何も知らずに見てるとちょっと不自然じゃないですか。からみが多いっていうか。
タイミングのいいことに今、CMで共演してますからね。

ああ、そうですね。あのたたないやつ
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奥さんの石川さんのほうが渡された花を見てこう…っていうシーンが2分ぐらいあるじゃないですか(笑)。
しかもあそこの宿屋の女主人とか奥さんとかじゃなくて女中なわけじゃないですか。なのに「なんかすごい長いな、このシーン」とか。

たしかにね(笑)。
セリフまわしも、あとから読むとわかるんだけど、微妙なセリフまわしが多かったり。
そうですよね。そういうのはたしかに。
僕としてはだから、谷啓さんがたぬきになっちゃって、なんてことをしてしまったんだっていう顔を
嶋田さんと佐野さんがしてるじゃないですか。 あそこで「いくじなし」って言われたあとに佐野さんしか反応してないんですよ。
嶋田さんは全然反応してなくって佐野さんだけが「くーん」みたいな(笑)。

あの話は佐野さん、ほんとにひどい目に遭ってますよね(笑)。かわいそうなかぎり(笑)。
ねえ。ほんとにいいように使われて。佐野さんって手間賃もらってるんですかね。
3話でゑびす島の話を聞いた後に、六分金かなんかを2、3枚…そんな少なくていいんですか、みたいな。
ねえ?「調べ物してくれ」っていうときはちゃんともらってるんだろうけど、
こういうふうにだましてこき使う時っていうのはノーギャラなのかなって思うと…(笑)かわいそうだな(笑)。
そういう遊びの姿勢だと、これだと、あれがあるんでしたっけ、赤鬼と青鬼がね、いますよね。
でもねえ、ほんとにこの二人が鬼だっていうのは、これ、実際名前見ないと誰がやってるのかわかんないですよね(笑)。
あのメイクだと。ほんとに赤と青で塗られてるし(笑)。
その前の、あの、子供が出てる地獄のシーンとちょっと落差があったりするわけじゃないですか。
きっちりした造形のあとに青塗り、赤塗りで「ガーッ」っていう。

ええ。いやー、でも子役っていえば、ていちゃんもね、可愛いのにねえ。あんな無残な殺され方でね。
でもほんとにひどいことの積み重ねで悲しみっていうのが、実際すごく強調されたなっていうね。
まあ、長二郎もかわいそうな奴ではあるんですけどね(笑)。
わりとあれはね、僕なんかも子供の頃、おふくろにガンガン叩かれたほうなんで(笑)。 あの、押し入れの中に逃げ込むとかね(笑)。
「ごめんよー」っていうのは「俺だ!」とかって思いながら(笑)見てましたよ。
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わりとそういう体験ってやっぱりこう、僕らの世代ぐらいまでで、あんまりその下は体罰とかっていうのはないみたいですけどね。
押し入れっていうの自体、まああんまり普通の家庭では聞かないですけどね、今。

自分の部屋とかに閉じこめちゃうのかな、今だと。やっぱ叩かないですよね。
わりと僕なんかも叩かれたほうなんで「うーん、親って怖えよなあ」っていう。
そうなんですよね。だからウチなんか、やっぱり俺らの歳ぐらいだと、おふくろがやっぱりこう、 竹の物差しとかで、
「お裁縫なんかしてねえだろ!」って思うんだけど(笑)、竹の物差しとかちゃんとあって、 その置き場所が部屋の鴨居の、
槍が置いてあるようなところに、こう出っ張ってるところに入れてあって、なぜか怒るときにそこからガッと(笑)。
鯨尺だったりするんでしょ?センチじゃなくて(笑)。
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そうセンチじゃなくて(笑)。 我が家に代々伝わる物差しみたいな感じで(笑)
竹槍みたいにガッと取られてバシバシ叩かれてたんで(笑)。
「うわー長二郎は俺だ、長二郎は俺だ!」とかって思いながら(笑)。
実際その撮影現場も見てたんで、長二郎が逃げ回る所とか。
その頃から感情移入しちゃって(笑)。
でもねえ、まあ、宮下順子さんみたいな美人なお母さんなら叩かれてもいいかな(笑)。 (一同爆笑)
うちのおふくろには見せられないけど(笑)。
宮下さん、やっぱりすごい人ですよね。
うん。そうですよね。
登場シーンの雷がバーって入るところとか。
すごい迫力(笑)。
なんでここが雷なのか不思議でしょうがないんですけど。
いや、やっぱりね、自然現象も巻き起こしてしまうんですよ。キャラクターの強さが。
あれ自然現象だったんですか?演出じゃないんですか?
いやだから、演出として雷をバーッとやったんでしょうけど、
何故雷がここで鳴るんだって言われると(笑)。
そのへんはだから、運とかそういうので引きみたいなもんで、
自然現象にタイミングがあってしまうキャラクターの強さっていうやつで。
「隠神だぬき」はそんなカンジですかね?

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