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本文はここから、撮影風景スタッフの日記

3月11日 土曜日

2005年8月、真夏の太陽の下でスタートした実景ロケ。
青々とした苗がやがて黄金色の穂を実らせ、山が真っ赤に染まり――。
そして木枯しが吹きすさび、冬の波が激しく打ち始めた日本海を疾走するSL。
初雪だっ!と駆けつければ、すでに関越トンネルの向こうは50cmの積雪。
移りゆく新潟の厳しく、美しい自然を捉え続けた撮影班。
数々の実景ロケと綿密な現地打合せを重ねて後、やっと迎えた2006年3月11日、オールスタッフが満を持して上越入り。 すでに2月半ばから上越入りしている美術と装飾スタッフがお出迎えです。
ロケセットが作られ、昭和初期の衣類や道具などが地元の皆さんによって続々と集められており、お借りしている倉庫は満杯状態です。 到着したスタッフも黙々と準備開始。いよいよです!
写真・風景1
写真・風景2

3月12日 日曜日

ふみ子役の鈴木理子ちゃん、サダ役の尾崎千瑛ちゃん、キク役の小浦彩里ちゃんが上越入り。
キクちゃんは、大阪からたった一人で来ました。なんとも頼もしい! 直江津駅に続々と降り立つ俳優陣は、降りしきる雪にこれからの厳しい1ヶ月を思いつつも元気ハツラツ! ただ、役作りで昭和初期のワカメちゃんカットにされた理子ちゃんのうなじはとっても寒そう…。
この日のために、俳優の皆さんも、方言、按摩、盲人所作、と準備に準備を重ねてきました。
見学させていただいた筑波大附属盲学校の皆さん、木村愛子先生、頑張りますから東京で応援していて下さいね。 ついに明日は、待ちに待ったクランクインです!!
写真・風景3
写真・風景4

3月13日 月曜日

ロケ地:新潟県立歴史博物館(長岡市関原町)
新潟県立歴史博物館公式ホームページ

ふみ子とサダの駄菓子屋シーンの撮影のため、県立歴史博物館へ出発。 しかし天候悪化…。
上越から高速にのった撮影隊キャラバンは、初日から物凄い横風と吹雪の洗礼を受けることになりました。
でも撮影自体には問題はありません!
なぜなら、この日の撮影は博物館内に再現された雁木(がんぎ)通りをそのまま拝借して行われるからです。この雁木通りを再現したのは、今回ロケの本拠地となる上越市の清水組さん。
雪国ならではの雁木の町の保存に情熱を傾ける清水社長を筆頭に、映画「ふみ子の海」を全面的にバックアップしていただいています。
すでに2月半ばから清水組の倉庫は映画の美術セットの為の作業場と化しているのです。
さて撮影は駄菓子屋とエキストラカットのシ−ン。これは、理子ちゃんの緊張をほぐそうという演出部の心配りです。「用意、スタート!!」近藤明男監督の声が響きました。
こうして「ふみ子の海」新潟オールロケーション撮影が始まりました。 この日は撮影が終了しても、すぐに上越の今井染物屋に移動して翌日のリハーサル。
理子ちゃんの元気な笑顔にスタッフも一安心でした。
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新潟県立歴史博物館
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館内 雁木通りを復元した施設

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館内 駄菓子屋を復元した施設にて撮影。ふみ子役の鈴木理子ちゃんとサダ役の尾崎千瑛ちゃん
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同じく駄菓子屋の施設にて撮影。駄菓子屋の主人役の高井清史さん

3月14日 火曜日

ロケ地:明願寺(上越市牧区原)
ふみ子のモデルである粟津キヨさんゆかりの地、牧の明願寺は、ふみ子が通う盲学校の表門の設定。
ロケハンで訪れたときには、表門も境内も3mくらいの高さの雪で覆われていましたが、 明願寺さんと上越市の皆さんが、この日までに除雪をしてくださいました。
門から境内までの道は、なんともいい雰囲気の出来栄え!
この日は実質の上越ロケ初日ということもあって、たくさんの方々が取材におみえになりました。 様々な質問に笑顔でハキハキと元気に答える理子ちゃんは、ここでも好感を持っていただけたようです。 こんなドカ雪は初めて見たという理子ちゃん。雪がたいそうお気に入りで、ウサギや小さな雪だるまを作ってはしゃいでいました。 牧の空はとても気持ちのいい晴天。
しかし、雪降りのシーンのため、ワザワザ人工の雪を降らせての撮影です。 寺男役のエキストラの方も名演技で、無事に明願寺での撮影を終えました。
この後は今井染物屋に移動して、ふみ子とサダのシーンを撮影です。
この日、笹山按摩屋主人タカ役の高橋惠子さんと、シズ役の西宮かなさんが上越入りしました。
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地元の方々に見守られて撮影
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ふみ子が通っていた当時の名前は「私立高田訓矇学校」

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理子ちゃんが作った雪のウサギ

3月15日 水曜日

ロケ地:旧今井染物屋(上越市大町)
旧今井染物屋は、笹山按摩屋の主人で高橋惠子さん扮するタカの仕事場兼家の設定で、2階は住み込みで働くふみ子、サダ、キク、シズの寝床。 撮影の大半を占める重要な場所です。
こちらは歴史的建造物を活かしたまちづくりの一環として一般公開されています。 この日はいよいよタカ役高橋惠子さんの登場!すごい迫力です。
そして、按摩屋のお客さんの役を演じるのはなんと!原作の市川信夫先生。 これは、地元エキストラの統括を引き受けてくださった上越映画鑑賞会会長・増村さんの心憎い演出。 冷え込むロケセットの中で、肌着一枚で繰り返されるテストは、74歳の市川先生には大変だったはず…。
でも「高橋さんに按摩してもらうなんて幸せです」と笑顔で仰ってくださいました。
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高田の雁木通り
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旧今井染物屋 内部。今ではとっても貴重な建物

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高橋さんの按摩に満足げな市川先生

3月16日 木曜日

ロケ地:旧今井染物屋(上越市大町)
この日も旧今井染物屋。
冬なのに真夏のシーンの撮影があります。 ふみ子が按摩の修業をしているシーンですが、出来は映画でご確認を! さらにこの日は雨のシーンもありました。
通称「雨降らし」は、役者もスタッフもびしょびしょになる辛い撮影です(しかも夜で寒い)。 見学にいらした地元の方々にもその大変さが伝わったらしく、監督の「OK」の声とともに大きな拍手を頂戴しました。 なんだかすごく嬉しかったです。
この日のお昼は地元の方の差し入れ「きのこ汁」!2種類のきのこがたっぷりで、お味も抜群! 本当にありがとうございました。こういう温かなお心遣いで、役者もスタッフも頑張れました。
ちなみに理子ちゃんのパパも雪遊びがお好きなようでした。
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寒くて冷たい「雨降らし」ご近所の皆さんご迷惑をおかけしました
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温かいのが何よりのご馳走!きのこ汁

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頑張る理子ちゃんを見守る優しいパパと

3月17日 金曜日

ロケ地:旧今井染物屋(上越市大町)
またまた旧今井染物屋。
後半の要となるシーンの撮影で、駅長役の石川禅さんと、巡査役の大島宇三郎さんが登場。この日は、家の中から外に出て行くシーンがあり、冬なので雁木の向こうに雪の壁が無ければいけないのですが……無い。
あんなにあったドカ雪が、ここ数日の晴天ですっかり溶けてしまい、高田の街の道路には雪がほとんど無い状態。ということで、旧今井染物屋裏に残っている雪を人海戦術で運ぶことに。しかも必要なのは高さ2mの雪の壁!雪かきに慣れていない撮影スタッフは大汗で、中にはTシャツ姿の人も。風邪をひかないか、この後がとても不安です。
3日間に渡りメインセットで行われた、按摩修行の厳しい撮影がひとまず終了!ほっとしたのも束の間、明日はお正月のシーンなのに、通りを飾る日の丸が足りない!!装飾スタッフの悲鳴に、急遽夜の住宅地へ。上越市観光企画課の方と、近所のお知り合いの家を回ってかき集めました。
皆様、ご協力ありがとうございました。夜分に変なお願いをしてしまい恐縮です。
ところでこの日、由緒ある高田盲学校の最後の卒業式がありました。生徒数の減少に伴う廃校です。
118年の歴史を閉じる最後の卒業生のもとへ、高橋惠子さんと鈴木理子ちゃんが撮影の合間を縫って祝福のために訪問しました。映画にも出てくる高田盲学校、とても他人事ではない私たちです。
(詳しくは、「映画の背景」のページをご覧ください!)
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巡査役の大島さん(左)と駅長役の石川さん(中左)
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スタッフ総出で雪集め。雪の壁を急ごしらえ

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理子ちゃんも雪運びのお手伝い。スタッフと違って楽しそう
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高田盲学校。最後の卒業式にて